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ダイレクト

ダイレクト

最終消費者に直接販売することで、中間マージンを省き低価格で提供するビジネスモデル。

 

【ビジネスモデルの内容】

最終消費者に直接販売するという形態のビジネスは古くからありました。インターネットの普及により、生産者と最終消費者が直接コンタクトを取ることが容易になったため近年、注目されているビジネスモデルです。

以下はダイレクトのメリットです。

①卸売業、小売業等の流通経路を経由していた場合に必要となる中間マージンが不要となるため、企業にとっては粗利益が増える。

②中間マージンが不要となるため、最終消費者は流通経路を経由する場合よりも低価格で購入することができる。

③従来、卸売業や小売業で保有していた流通在庫が不要となり、効率的な生産活動が可能となる。

④流通経路が短縮されることにより、発注リードタイムが短くなる。

⑤最終諸費者と直接コンタクトを取ることにより、消費者の生の声を知る機会を得ることができる。生の声は、製品の改良、新製品の企画等に活かすことができ、より顧客満足の高い商品を提供できるようになる。

⑥見込み生産から受注生産に生産体制を変更することが可能となり、原材料在庫、部品在庫、製品在庫の適正化を図ることができる

 

【ビジネスモデルの根幹】

ダイレクトの根幹には「流通経路の見直し」と「垂直統合」があります。

「流通経路の見直し」では、「販路拡大」と「チャネル短縮」の2つの方法がありますが、ダイレクトは「チャネル短縮」に該当します。

また「垂直統合」は製造から卸売業、卸売業から小売業、小売業から消費者への商品の流れを、製造業が卸売業、小売業を兼業することで統一することです。製造業が小売機能を持つことで、ダイレクトも垂直統合の一種と見ることができます。

 

【応用例】

コンピュータの業界においては、デルが有名です。デルはオンラインで最終消費者にスクルーンサイズ、プロセッサー、メモリ、ストレージ容量等を選択してもらい組み立てて出荷しています。勿論、コンピュータのスペックに詳しくない方の店頭で販売員の説明を聞きたい、すぐに使いたい方の店頭で購入して持ち帰りたい等のニーズは存在します。最近では、デルも家電量販店に卸して店頭販売も行っています。

また日本国内の流通チャネルに参入できない外資の保険会社は、インターネットを通じて最終消費者にダイレクトに販売しています。

事務用品のダイレクト販売を行うアスクルは、元々は事務機器メーカーのプラスが初めたビジネスです。コクヨが事務用品の流通チャネルにおいて強い力を持っていたため、独自のチャネルとしてダイレクト販売を行い、急成長しました。最近では一般消費者向けのLOHACOも展開しています。

 

【問題点】

 ダイレクトは新たに市場に参入する場合、流通チャネルを構築する必要がありません。従って新規参入者に向いたビジネスモデルです。

一方、既に市場内で流通チャネルを構築している企業にとっては採用しにくいビジネスモデルです。実際、コクヨアスクルの後を追うようにカウネゥトとしてダイレクトを採用しましたが、既存の流通チャネルと併用しているため前述のダイレクトのメリットを十分には活かせていません。

また専門品のように、その販売に詳しい商品知識を要するような商品や一等地での店舗立地や豪華な装飾の店舗において購入することに価値のある高級品など、商品の特性によりダイレクトが適しているか否かを検討する必要があります。

更に他社もダイレクトを採用すると、価格での比較が容易になるため価格競争に陥ってしまうこともあります。

ダイレクトの限界は、発信する情報の範囲が自社の情報発信能力に制限されてしまうことです。卸売業、小売業を通さないため、これら中間業者の情報発信能力を利用できません。従って、広く市場をカバーできる情報発信の方法を構築できるかが重要となります。