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企業間取引のデジタル化

企業間取引のデジタル化

 

感染症の流行により、リモートワークへの取り組みが進められています。特に緊急事態宣言が発出されている期間は、不要不急の外出を控える、通勤の7割削減等の要請により出社は勿論、顧客への訪問も控えざるを得ません。これらの制約が企業間の取引にどのような影響を与えたのでしょうか。

 2021年版中小企業白書から、企業間取引におけるデジタル化の状況を確認しましょう。

次のグラフは業種別にリモート商談への対応状況を見たものです。感染症流行前からリモート商談に対応していたのは、製造業で5.4%、サービス業で10.9%、その他で5.8%と多くない状況です。それが感染症流行後に対応を始めたのが製造業で24.8%、サービス業で28.0%、その他で18.2%となり、感染症の流行をきっかけにリモート商談への対応が進んでいるのが伺えます。しかし、どの業種も半数以上が「当面は対応の予定なし」と回答しています。

 

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更に従業員規模別にリモート商談への対応状況を確認します。

すると感染症流行前では、従業員規模によるリモート商談への対応に大きな差はみられません。しかし、感染症流行後では従業員規模が大きくなるにつれ、リモート商談へ対応している企業の割合が多くなっています。「対応を検討中」まで含めると、21人以上の企業でリモート商談に前向きであることが読み取れます。

 

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 電子受発注への対応はどうなっているのでしょうか。

次のグラフで確認すると、全ての業種で3割以上の企業が感染症流行前から電子受発注に対応していました。そのためか感染症の流行を機に電子受発注に対応を始めた企業はどの業種でも1割にも達しません。

発注作業は商談と異なり定型的な業務であり、電子化しやすいと言えます。従って、従来より電子化が進んでいたため、感染症の流行によって電子化が進む余地が小さかったと思われます。

 

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 電子受発注に関しても従業員規模別にその対応状況を調査したデータがあります。やはり従業員規模が大きくなればなるほど、電子受発注に対応している企業の割合が高くなっています。

 

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ではどのようなきっかけでリモート商談や電子受発注への対応を始めたのでしょうか。

感染症の流行の前後に関わらず自社の判断でリモート商談や電子受発注を始めたのか、それとも他社からの要請に応じるために始めたのかを調査したのが次のデータです。

リモート商談では「自社にて必要性を判断したため」が55.9%と半数を超えているのに対して、電子受発注では「取引先から要請されたため」が62.2%と半数を超えています。この調査は受注側の企業を対象に行っているため、電子受発注に関しては発注側の企業の意向が大きく影響していると考えられます。

 

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 結果として規模の小さな企業では、企業間取引のデジタル化が相対的に進んでいない様です。しかし、デジタル化により業務の効率化を進めることは、従業員の少ない企業であっても大きな効果を得ることができるでしょう。本調査は今後も続けてほしいと思います。

(図表は2021年版中小企業白書より引用)