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中小企業の財務面の課題

中小企業の財務面の課題

 

事業戦略の立案や実行において、自社の業績や資金繰りの状態を知っておくことは非常に重要です。2021年版中小企業白書では、自社内での業績・資金繰りの予測がどの程度共有されているかを「十分できている」、「ある程度できている」、「どちらともいえない、あまりできていない、全くできていない」の3つに分類し、それぞれが財務面で感じている課題について調査しています。すると「十分できている」企業は、37.5%も財務面での課題は「特にない」と回答しています。

一方、「どちらともいえない、あまりできていない、全くできていない」企業は、「固定費が高い」、「借入金が多い」、「売上高が低い」と答えている割合が高くなっています。

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 白書では、業績・資金繰りについて予測している期間についてもデータを紹介しています。最も多いのは「4~6か月後」であり35.7%、次に多いのが「7~12か月後」の22.0%です。6か月、12か月という括りで管理されている企業が多いのではないか、と考えられますが、できれば長めに管理されていることが望ましいでしょう。

 

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 財務面での課題と業績・資金繰りの予測の期間との関係を調べたのが次のグラフです。

業績・資金繰りの予測期間を「7カ月超」、「4~6か月後」、「1~3か月後」の3つに分けて財務面での課題を聞いています。

すると予測期間が長くなるほど「特にない」の回答が多くなっています。また予測期間が短くなるほど「借入金が多い」、「手元現貯金が少ない」、「借入れの返済負担が大きい」、「売上債権の回収が遅い」等の回答をした企業の割合が高くなっています。

手元現貯金が少なかったり、借入れの返済負担が大きいほど資金管理の重要性が増すため予測期間の長期化が望ましいと思われます。

 

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 財務の状態を示す指標はいくつかあります。白書では各種財務指標を計算しているか調査を行っています。すると中央値で売上高経常利益率が79.0%、損益分岐点売上高が77.2%、自己資本比率が73.3%となっていました。更に、この70%を超える3つの指標について計算している企業と計算していない企業との間で各指標の水準に差異があるか調査しています。

その結果、売上高経常利益率は計算している企業の方が、高い値を示していました。また損責分岐点売上高は計算している企業の方が低い値であり、売上高の減少に対して耐性があることを示しています。更に自己資本比率を計算している企業のほうが「債務超過」、「0%以上20%未満」の企業の割合が低くなっています。

財務指標を用いて経営管理を行うことにより、財務面での安全性を高めることが望まれます。

 

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 (図表は2021年版中小企業白書より引用)