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感染症流行後の事業環境の変化

感染症流行後の事業環境の変化

 

感染症の流行が多くの企業の事業環境を変化させたことは間違いありません。しかし事業環境の変化は、感染症流行以前からも起きていました。そこで企業が感染症の流行により事業環境の変化がどのように進んだのか感じているか、を調べたのが次のグラフです。

「これまでになかった新たな変化が生じた」と回答した企業が55.3%と半数を超え、「従来からの変化が加速した」と回答した企業が15.7%存在しています。

 

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では感染症の流行以前には、どのような事業環境の変化が起きていたのでしょうか。

2021年版中小企業白書では、「人口減少」、「デジタル化」、「グルーバル化」、「消費者や従業員の価値観の変化」などを挙げており、特に「環境・エネルギー、SDGs/ESG」を取り上てで分析しています。

2019年版の中小企業白書では、中小企業に新たに進出を検討している分野を聞いていました。その結果、「環境・エネルギー」と回答した企業の割合が12.9%と最も高くなっていました。

 

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 なぜ環境・エネルギーへの関心が高いのか。いくつか理由はありますが重要なキーワードとしてSDGsやESGがあります。

SDGsは2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発を目的とした2016年から2030年までの17の国際目標です。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略であり、これらに関する活動も考慮して行う企業への投資をESG投資と呼びます。

投資家から資金提供を受ける際、SDGsやESGへの取り組みが評価される背景が環境・エネルギーへの関心が高くなる一因となっているのです。

次のグラフは、国・地域別のESG投資残高を見たものです。欧州と米国の投資残高の多さには目を奪われますが、日本でも規模は小さいながらも2018年では約2兆2千億ドルと成長してることが見て取れます。

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では実際に日本ではSDGsやESG関連の投融資について金融機関はどのようなスタンスなのでしょうか。次のグラフは環境省が実施した「2019年度ESG地域金融に関するアンケート調査」からのデータです。「将来的な成長領域であり、資金需要が拡大していく」と回答した金融機関が38%、「将来的な成長領域であるが、短期的には資金需要は多くない」との回答が37%存在しています。約7割強の金融機関が、将来的な成長分野であることを認識しています。

 

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大企業ならばともかく、中小企業がSDGSに取り組む意義はどこにあるのでしょうか。

2021年版中小企業白書では、2020年3月に環境省が公表した「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(第2版)」から中小企業がSDGsの活用によって期待できる4つのポイントを紹介しています。

①企業イメージの向上

SDGsへの取り組みをアピールすることで、企業の信用度や好感度が上がり、より多様性に富んだ人材確保につながる。

 

②社会課題への対応

SDGsに掲げられた様々な目標を実現のための取り組みは、経営リスクの回避とともに社会貢献や地域での信頼獲得につながる。

 

③成長戦略になる

今後、企業間取引においてSDGsへの対応が条件となる可能性もあり、持続可能な経営を行う戦略として活用できる。

 

④新たな事業機会の創出となる

SDGsへの取り組みをきっかけとして、地域との連携、新しい取引先・事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など、今までになかったイノベーションやパートナーシップを生むことにつながる可能性がある。

 

では企業はともかく、消費者はSDGSに関してどの程度、認知しているのでしょうか。次のグラフは2018年から2020年まで消費者のSDGsへの認知度の推移を見たものです。2020年でも「知らない」との回答が60.2%と認知度はまだまだ低いようですが、推移でみると着実に「詳しく知っている」「聞いたことはある」が増えてきています。
2025年開催の大阪万博の開催目的にも「持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献」が挙げられており、今後さらに消費者に浸透していくことでしょう。

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企業がSDGsに取り組むにあたっては、その目的を定めて何を行うのかを決める必要があります。

次の表は、企業がSDGsに取り組む目標と取り組む動機、そしてどのようにSDGsを使うかの例です。

 

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環境・エネルギーへの対応として、SDGsへの取り組みを取り上げました。今後の企業経営において有効に活用していきたいものです。

 

(図表は2021年版中小企業白書より引用)