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感染症流行後の海外需要獲得

感染症流行後の海外需要獲得

 

人口減少社会である日本にとって海外の需要の取り込みは、企業の成長における重要な要因です。直接輸出というと大企業をイメージしてしまいますが、実際のことろ、中小企業における直接輸出はどんな状況なのでしょうか。

まずは2021年版中小企業白書より、感染症流行前の企業規模別に直接輸出企業の割合を確認致しましょう。

これによると長期的には、大企業では直接輸出を行う企業の割合は減少気味、中小企業では増加傾向にあることが見て取れます。

 

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次は中小企業の輸出額と売上高に占める輸出額の割合を製造業と非製造業とに分けたグラフです。輸出額は上下変動はあるもの長期的には増加傾向です。但し、2016年からは減少しています。

また非製造業の売上高に占める輸出額は大きく変化していませんが、製造業では大きく輸出額の割合が増加しています。

 

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 しかし、2020年には感染症が流行しました。この感染症の流行が海外展開を行う中小企業にどのような影響を与えたのでしょうか。

(独)日本貿易振興機構が実施した「2020年日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」に基づき、感染症流行が海外展開を行っている企業の売上高に与える影響を確認しましょう。

海外売上高には64.8%の企業が「マイナスの影響」があったと回答しています。

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感染症流行は、海外ビジネスの見直しをもたらしています。企業規模別に海外ビジネスの見直しを調査したところ、中小企業では「販売戦略の見直し」を回答した企業が44.3%と一番多くなっています。

次に多い回答が28.3%の「何も見直さない」です。先のグラフで海外売上高において「売上高への影響はない」と答えた企業が27.1%、「プラスの影響」が8.1%も存在していますので、その結果が見直しを必要としない企業の回答割合にも納得できます。

 

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では最も回答の多かった販売戦略の見直しと併せて生産の見直しについて、詳しく見ていきましょう。

販売戦略の見直しでは「海外販売先(ターゲット)の見直し」が60.9%とダントツに多くなっています。次いで「バーチャル展示・商談会等活用の推進」が38.5%、「越境EC販売開始・拡大」が30.0%となっています。販売先と販売方法の見直しに取り組んでいることが分かります。

生産の見直しでは「生産数量・配分や生産品目の見直し」が50.9%と最も多い回答となっています。着目すべきは「新規投資/設備投資の増強」と回答した企業の割合が27.5%と「新規投資/設備投資の中止・延期」の19.8%を上回っていることです。

感染症が流行していても積極的に設備投資を行う企業が3割近く存在することは心強く思います。

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(図表は2021年版中小企業白書より引用)