中小企業のデジタル化推進に向けた業務変革
デジタル化を推進するためにはデジタル化が定着する取組が必要となります。では中小企業はデジタル化を定着させるため、どのような取組を行っているのでしょうか。
次のグラフは、中小企業のデジタル化の定着に向けた取組を調べたものです。ITの活用レベルを、レベル1「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」、レベル2「紙や口頭でのやりとりをITに置き換えている」、レベル3「ITを活用して社内業務を効率化している」、レベル4「ITを差別化や競争力強化に積極的に活用している」の4段階に分けています。
どのレベルでも高かったのが「日常的な改善活動」でした。総じてレベルが上がるに従い定着に向けた取組の実施割合が高くなっていますが、「IT活用の継続的な見直し」や「IT活用に関する日常的はな情報収集」ではレベル4とレベル3では20%pt以上の差が生じています。
デジタル化を進めることにより、従来の業務プロセスを見直すことに繋がります。ではデジタル化によりどの程度業務プロセスの見直しが進んだのでしょうか。
次のグラフで確認すると、「業務プロセスの全体を刷新した」と「業務プロセスの一部を調整した」を合わせると半数以上の企業となります。
デジタル化を推進して業務プロセスを見直したことが、業績にどのような影響を及ぼしたのか。次のグラフで確認しましょう。
「業務プロセスの全体を刷新した」企業は、「大きくプラスの影響を及ぼした」が36.1%、「ある程度プラスの影響を及ぼした」が49.4%となっています。合計すると85.5%もの企業がプラスの影響を受けています。「業務プロセスの一部を調整した」企業においても「大きくプラスの影響を及ぼした」が11.2%、「ある程度プラスの影響を及ぼした」が62.6%、合計すると73.8%となります。
一方、「業務プロセスを変更していない」企業においては、54.3%の企業が「どちらとも言えない」と回答しており、デジタル化の推進が業績に反映されていない様子が伺えます。
デジタル化の推進において、業務プロセスを見直したか変更していないかの違いにより業績に影響があったか否かを業種別に調べたものが次のグラフです。
するとどの業種においても業務プロセスを見直した企業は、業績にプラスの影響を及ぼてしていることが確認できます。
社内のルールの見直しにデジタル化を採用することもあるでしょう。そこで社内ルールに見直しにデジタル化を推進したか否かにより業績にどんな影響があったのかを調べたのが次のグラフです。
すると「事業課題の解決のため、社内ルールの見直しを進め、その一環としてデジタル化をすすめた」企業においては、「大きくプラスの影響を及ぼした」が15.6%、「ある程度プラスの影響を及ぼした」が61.8%となっており、デジタル化を推進したことで業績にプラスの影響がより顕著であったことが確認できます。
更に2021年度中小企業白書では、ITツールの導入と業務プロセスの見直し方法について労働生産性との関係を調べています。導入するITツール・システムに合わせて業務プロセスを見なおすのか、それとも業務プロセスの見直しに合わせてITツール・システムを導入するのか。どちらが労働生産性が高くなったのでしょうか。
データでは、「導入するITツール・システムに合わせて、業務プロセスを見直しを行す」企業の方が6,746千円/人とより高い労働生産性を示しています。
労働力人口が減少する中、企業の成長のためには生産性を向上させる必要があります。デジタル化を進めることは、生産性の向上をもたらします。そのデジタル化の効果をより享受するには、業務プロセスや社内のルールを見直していくことが重要となります。
(図表は2021年版中小企業白書より引用)