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アインシュテルング効果

アインシュテルング効果

問題解決の際、個々の問題を吟味して対処せず、過去の成功事例に固執する傾向。

 

【解説】

 アインシュテルングとは、ドイツ語で「構え」を意味する言葉です。何かの問題の解決に取り組んでいる際、既に身に着けた解法を用いようとしてより簡便な解法に気付かない現象です。

将棋でも定跡に囚われてしまい、その局面での最善手を逃してしまうことがあります。定石を覚えておけば、ある程度の局面までは深く考えなくても指し手を進められますが、それゆえもっと良い手はないかを考えなくなってしまいます。近年、将棋AIの進歩により過去の定石では見逃されていた手が発見され、将棋における序盤研究の重要性が高まっています。

 

【信憑性】

この傾向は1942年に行われたアメリカの心理学者アブラハム・S・ルーチンスの実験で広く有名になりました。

ルーチンスの行った「水がめ問題」では、3つの水がめを使って要求される水の量を満たします。問題ごとにA・B・Cの水がめの容量と要求される水の量は異なります。

まず3つの水がめを使わないと解けない問題が出されます。出題は第二問、第三問と続きますが、途中から2つの水がめでも解ける簡単な問題が出題されても解答者はそれまでの3つの水がめを使った解法で解こうとします。3つの水がめを使った解法でうまく解けていたので、それ以外の解法で考えることができなくなってしまったのです。

大学生に行った実験では、81%の学生が複雑な問題を解いた後では簡単な問題にも関わらず複雑な問題を解いた解法を用いました。より簡単な解法に気付いたのは、19%しかいなかったそうです。 

関心のある方は「水がめ問題」で検索してみてください。

 

【適用例・対策】

将棋の世界には「名人には定跡なし」という言葉があります。名人ほどの達人になればこれまでの常識にとらわれず最善手を追求する、との意味です。

我々凡人ではとても名人を真似することはできません。アインシュテルング効果から完全に逃れるのは不可能、とも言われています。

進化論のチャールズ・ダーウインは、自分と違う意見に接すると必ずメモを取り、忘れないようにしていたそうです。自分と違う意見を頭から排除するのではなく、自分の考えを見直す機会として活かしていました。アインシュテルング効果という言葉がなかった時代ですが、ダーウィンは自分の意見が間違っている可能性を否定せず、常に真実を求めていたのです。

 

アインシュテルング効果に陥らないようにするには、積極的に自分と違う意見に触れる、これまでの成功例を捨ててゼロベースで考えてみる等の姿勢が必要です。