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中小企業の経常利益率

中小企業の経常利益率

 

前回のブログで中規模企業と小規模企業の自己資本比率の上昇の原因として、利益剰余金の増加を指摘しました。次のグラフはその利益剰余金の蓄積の源となる経常利益の推移を見たものです。すると中規模企業では2000年代から、小規模企業では2010年代から経常利益が増加していることが確認できます。

また中規模企業と小規模企業では、1社当たりの売上高は2000年代から横ばい傾向にあります。売上げが横ばいでありながら経常利益を増加させていることから、これらの企業の収益力が向上していることが伺えます。

 

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 次のグラフは業種別に売上高経常利益率の分布を見たものです。「宿泊業」「生活関連サービス業」「飲食サービス業」では赤字の企業の割合が高くなっています。

一方、「卸売業」と「小売業」では売上高経常利益率が5%以上の企業が少ない現状が読み取れます。業種によって収益力が異なる現状が見えます。 

 

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売上高の増減に対する安全度を知る指標として、損益分岐点比率があります。損益分岐点比率は、現状のコスト構造において売上高が何%下がったら赤字になるかの示す指標であり、この指標が低いほど売上高の減少に対して赤字になりにくい体質であることを意味します。

次のグラフは企業規模別に損益分岐点比率の推移について見たものです。2019年度における大企業の損益分岐点比率は60.0%の値です。しかし、中規模企業では85.1%、小規模企業では92.7%であり、売上が10~15%低下すれば赤字になってしまいます。感染症の流行による売上高の減少が、中規模企業と小規模企業に与える影響が心配されます。

 

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 業種別に損益分岐点比率の分布を見てみましょう。

損益分岐点比率が90%未満の企業が多い業種は、「製造業」と「卸売業」です。これらの業種は赤字に転落しにくい業種と言えるでしょう。

一方、「宿泊業」「小売業」「飲食サービス業」では100%以上、つまり赤字の企業が多くなっています。これは2019年のデータですので感染症が流行した2020年ではどのような結果になっているのでしょうか。

 

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(図表は2021年版中小企業白書より引用)