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中小企業の事業承継の実態

中小企業の事業承継の実態

 後継者の不在は、中小企業の経営において重要な問題です。一方、後継者に恵まれ事業承継を果たしている企業も存在します。

最初のデータは、後継者が事業承継の意思を伝えられてから経営者に就任するまでの期間です。最も多いのが「5年超」の32.3%。「半年未満」が22.4%もありますが、前経営者に健康問題等があったのでしょうか。なぜ「半年未満」と短期間になっていたのか。その理由が気になるところです。

 

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次のグラフは、事業承継の意思を伝えられてから経営者に就任するまでの期間を経営者への就任経緯別に見たものです。

「先代経営者の親族」つまり同族承継では「5年超」が43.9%と早い時期に事業承継の意思が伝えれていることが分かります。

一方、「外部招へい・その他」では「半年未満」が45.5%となっています。何らかの事情により急いで後継者を決める必要が生じた様子が伺えます。

 

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 事業承継が行われた場合、これまでの経営方針はどうなるのでしょうか。経営者も変わったことにより、経営方針も変わるのでしょうか。

この疑問に答えてくれるのが、経営者の就任経緯別に現在の経営者が事業承継した際の経営方針について見た次のグラフです。「先代経営者の取組の承継・強化」では「先代経営者の親族」が47.6%と最も高く、「社内役員・従業員からの昇格」(40.1%)、「外部招へい・その他」(32.0%)の順に低くなっています。

逆に「新たな取組に積極的に挑戦」では「外部招へい・その他」が41.4%と最も高く、「社内役員・従業員からの昇格」(40.8%)、「先代経営者の親族」(39.9%)の順にい低くなっています。

先代の取組を承継させたいのであれば同族での承継が適しており、新たな取組に挑戦して欲しいならば外部から招へいすることが適している、と言えそうです。

 

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 次のグラフは、就任経緯別に現在の経営者が事業承継前5年程度の間に承継に向けて実施した取組について確認したものです。

「先代経営者の親族」を見ると、「その他」「特になし」を除く全ての項目で最も高い割合になっています。これは事業承継の意思を伝えられてから実際に経営者に就任するまでの期間が長いため、いろいろなことに取組める時間的余裕があるからだと考えられます。

一方、「外部招へい・その他」においては「得になし」が37.9%と4割近く存在しています。事業承継までの期間が短いため、その準備に取組む時間的余裕がなかったことが伺えます。

 

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では事業承継後において、現経営者はどのような取組を行っているのでしょうか。

次のグラフは現経営者が事業承継後5年程度の間に意識的に実施した取組について調べたものです。承継前の取組と比べると、就任経緯に関係なく様々な取組を行っており、その傾向も似たような感じとなっています。

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 事業承継の経営方針では「先代経営者の取組の承継・強化」「新たな取組に積極的に挑戦」「どちらとも言えない」に分けて調査しています。その経営方針別に現経営者が事業承継後5年程度の間に意識的に実施した取組を調べたのは次のグラフです。

「先代経営者の取組の承継・強化」と「新たな取組に積極的に挑戦」は、共に様々な取組に挑んでいることが確認できます。一方、「どちらとも言えない」では、さまざまな取組に挑んでいる企業の割合が低く、「特になし」と回答している企業が34.8%も存在しています。明確な経営方針がないことがこのような結果となっているのでしょうか。


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次のグラフは、承継方法別に事業承継の課題を見たものです。承継方法の違いに関係なく、「事業の将来性」について半数以上の経営者が課題と認識しています。特徴的なのは「後継者の経営力育成」と「後継者を補佐する人材の育成」において、「同族承継」と「内部昇格」が高い割合を示していますが、「外部招聘」ではそれほど高い割合ではありません。一方、「近年の業績」では「外部招聘」が39.2%と高い割合を示しています。業績に問題があるからこそ、外部から経営者を招聘し経営体制を一新したいとの意図があるようです。

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事業承継は自社内だけでなく、取引先や金融機関などの外部のステークホルダーにも関わってきます。スムーズに事業承継できるように長期的に取り組むことが望ましいと言えます。また場合によっては、外部からの招聘も有効な手段であると言えます。


(図表は2021年版中小企業白書より引用)