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中小企業の後継者問題

中小企業の後継者問題

 

 後継者がいないため廃業する。このような事例が中小企業で生じています。

では後継者がいない中小企業はどれくらいの割合で存在しているのでしょうか。

2021年版中小企業白書では、後継者不在企業の割合を「後継者不在率」と称してその推移を紹介しています。後継者不在率のピークは、2017年の66.5%。そこから減少を始めて足下の2020年では65.1%となっています。

 

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次のグラフは後継者不在率を業種別に見たものです。後継者不在率が高い業種は「建設業」の70.5%、「サービス業」の69.7%、「不動産業」の67.5%となっています。一方、後継者不在率が低い業種は「製造業」で57.9%、「運輸・通信業」で61.5%、「卸売業」が63.0%です。業種により差はありますが、全ての業種で半分以上の企業が後継者不在となっています。

 

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後継者の有無と企業の業績には相関関係がある、との説があります。実際のところはどうなのでしょうか。

次のグラフで後継者の有無と業績の関係を見ることができます。これによると「後継者有企業」の2015年から2019年の売上高成長率の中央値は7.2%です。対して「後継者不在企業」の同じデータは6.3%であり、後継者有企業の方が売上高成長率が高いことが確認できます。

 

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 また後継者の有無別に2015年から2019年の営業利益成長率の中央値を見たのものが次のグラフです。「後継者有企業」で21.1%、「後継者不在企業」で20.4%ですから差は大きくないものの、「後継者有企業」のほうが高いことが確認できます。

 

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更に後継者有無別に2015年から2019年の従業員数成長率を見たものが次のグラフです。「後継者有企業」で3.1%、「後継者不在企業」で2.0%ですから従業員数成長率においては明確な差があります。

 

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後継者がいないため新事業進出などの積極的な経営ができずパフォーマンスが伸びないのか、パフォーマンスが良くないため後継者がいないのか。

どちらが原因でどちらが結果なのかはともかく、事業継続を望むのに後継者がいないのであれば、事業の見直しや経営改善に取り組むなどで企業の磨き上げに注力することも重要である、と白書では結論付けています。


(図表は2021年版中小企業白書より引用)