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事業環境の変化への対応

事業環境の変化への対応

 

 感染症の流行や自然災害はもとより、取引先の倒産やマクロ経済の変化など企業を取り巻く事業環境の変化は企業経営そのものに大きな影響を与えます。また外部環境だけでなく、経営者の健康や後継者問題など社内の事情により経営が傾くことも珍しくありません。

2021年版中小企業白書では、これまで経営の危機に遭遇した企業に対して業種別にどのような危機が生じたのかを調べています。次のグラフを見てみると、リーマン・ショックバブル経済崩壊などの経済に起因する危機と回答する企業は製造業や卸売業に多いことが分かります。また東日本大震災などの自然災害と回答する企業は、宿泊業や生活関連サービス業で多いことが分かります。

業種によって、危機をもたらす環境の変化が異なっているようです。

 

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 では、企業はこれらの危機をもたらした事業環境の変化に対して、どのように対応してきたのでしょうか。次のグラフで確認すると、危機前の取り組みでは「新事業分野への進出、事業の多角化」が24.2%と最も多くなっています。

また危機下の取り組みでは「資金繰りの改善」が17.4%と最も多くなっています。「不採算事業の見直し、中核事業への集中」と「雇用や人件費の削減」がともに11.7%となっており、コスト面での見直しが行われていたことが伺えます。

 

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次のグラフは2014年に経営危機を乗り越えるために行った事業戦略の取り組みを調査したものです。ここでの危機は、リーマン・ショックにより危機を経験した企業はそのリーマン・ショックを、リーマン・ショックの影響はなかったがその他の危機を経験した企業はその危機としています。また調査対象を調査時点の総資本利益率が2%以上の企業を経営パフィーマンスの高い企業とし、2%以上か2%未満下で経営パフォーマンスを区分しています。

すると経営危機に対する事業戦略上の取り組みを「特になし」と回答した企業では、総資本利益率が2%未満が多いという結果になっています。ここから2021年版中小企業白書では、「経営危機を乗り越えるために、事業戦略の見直しを行うことの重要性が示唆される」(P245)と結論づけています。

 

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続いて経営危機を乗り越えるために行った雇用・人材以外の取り組みについて見たものが次のグラフです。

総資本利益率が2%以上の企業では「新規顧客開拓」が56.5%、「生産効率改善」が40.2%、「高付加価値製品・サービスの拡充」が28.1%となっています。これらの項目では2%未満の企業よりも2%以上の企業の方が多く取り組まれていました。

また「特に取り組みはしていない」と答えた企業は2%以上の企業は4.8%であるのに対して、2%未満の企業は11.4%とかなり多くなっています。

 

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 次のグラフは経営危機を乗り越えるために雇用・人材でとのような取り組みを行ったのかを調べたものです。総資本利益率が2%以上の企業も2%未満の企業も「役員報酬のカット」、「賞与のカット」、「減給」が多い回答となっています。そしてほとんどの項目で2%未満の企業の割合が高くなっています。

「特に取り組んでいない」以外で2%以上の企業が取り組んだ割合が多いのが「社内人材の教育・訓練」となっています。単にコストを下げる取り組みだけでなく、人材への投資が高い経営パフォーマンスをもたらしている可能性を感じます。

 

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(図表は2021年版中小企業白書より引用)