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オルタナティブ・ファイナンス

オルタナティブファイナンス

 

2021年版中小企業白書では、中小企業の資金調達について、近年の動向を詳しく紹介しています。資金調達に手法としては、①予め定めた対象期間や融資枠の範囲で企業の要求に応じて銀行が融資を行うコミットメントライン、②月々の返済がなく期限一括償還を行う資本性劣後ローン、③株式発行によるエクイティファイナンス、④インターネットを活用したオルタナティブファイナンスを紹介しています。

今回は、その中でも最近、注目度が高いオルタナティブファイナンスについて見ていきます。

 

まずは世界のオルタナティブファイナンスの世界規模についてのデータです。目を引くのが中国の規模の大きさです。ピークの2017年では3,590億ドルもあり、中国だけで2018年の世界規模の3,050億ドルを上回っています。2018年には2,160億ドルと2017年の三分の二の規模に落ちていますが、それでも全体の7割を占めています。

一方、米国及びその他の国では徐々にですが市場が成長している様子が伺えます。

 

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オルタナティブファイナンスのうち、インターネットを通じて不特定多数の個人から資金調達を行うクラウドファウンディングについての国内市場のデータです。データは①事業者が個人から小口の融資を集めて大口化して貸し出す「融資型」、②資金提供者が何らかのモノやサービスの提供を受ける「購入型」(商品やサービスの提供を伴わない「寄付型」を含む)、③個人投資家に未公開株式を提供する「株式型」に分けて市場規模の推移を表しています。

縦軸が違うので3つの類型間の比較がやりにくいですが、数値に着目して下さい。「融資型」が一番規模が大きのが分かると思います。2020年に関しては「購入型」におけるデータしかありませんが、1~6月までの半年で223億円と2019年の年間169億円を上回っています。感染症の拡大と共に「購入型」の市場の急拡大しているようです。

 

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中小企業白書では、「購入型」が増えた理由を以下の様に述べています。

「「購入型」が増加した理由として、クラウドファンディングを運営する事業者各社
が、感染症流行下の事業者を支援するため、手数料を大幅に引き下げるキャンペーンを実施したことなどが影響していると考えられる。感染症の影響の大きかった飲食店やライブハウスなどで、「寄付型」や前払チケットをリターンとして提供する「購入型」の活用が増えたと言われている。」(P233・234)

下表はその例です。

 

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 ではクラウドファウンディングはどの程度、中小企業に浸透しているのでしょうか。

次のグラフを見てみると活用の有無にかかわらずクラウドファウンディングを知っている、と回答した企業は約9割となっています。しかし、「活用したことがあり、また活用したい」が1.1%、「知っており、活用を検討している」が2.3%、「活用したことがあるが、今後活用する予定はない」の1.6%を合わせても約5%に過ぎません。

中小企業においてクラウドファウンディングは認知されているものの、活用には至っていない現状が見て取れます。

 

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実際にクラウドファウンディングを活用しているのは、どのような企業なのでしょうか。クラウドファウンディングの活用状況を業種別に細分したものが次のグラフです。

クラウドファウンディングの活用実績・活用意向がある企業が多い業種は「宿泊業」、「飲食サービス業」であることが分かります。

 

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 クラウドファウンディングの活用したい理由を確認したのが次のグラフです。

「アイデア勝負で資金調達できる」が66.3%であり、この回答をした企業の割合が圧倒的に多いです。

 

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最後はクラウドファウンディングを活用した資金調達の目的です。「新規顧客獲得・販路開拓」が61.9%、次いで「試作品開発」が33.9%と高い値になっています。クラウドファウンディングが資金調達だけでなく、テストマーケティング的な手法として活用されていることが分かります。

 不特定多数の方の反応を見ることで市場開拓や商品開発にも活かせることが、クラウドファウンディングの魅力となっているようです。

 

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資金調達の方法の一つとしてオルタナティブファイナンス、それもクラウドファウンディングについて、ご紹介しました。

中小企業白書では、他のオルタナティブファイナンスとしてトランザクションレンディングについても紹介しています。トランザクションレンディングとは、ECによる販売実績や消費者のレビュー、会計ソフトの入力情報、金融機関の預金口座情報、クレジットカードの決済情報など、これまで金融機関が融資の審査において使用していなかった情報をAIで分析して行う資金調達です。従来の審査では融資を受けられなかった企業にも融資の道を開くと期待されています。

但し、中小企業白書のデータでは、トランザクションレンディングを知っている企業は50%程度であり、まだまだ認知度は低いようです。

 

(図表は2021年版中小企業白書より引用)