中小企業の休廃業・解散の動向と事業展開
今回からは中小企業の休廃業・解散の状況を確認し、事業展開の様子を見ていきます。
次のグラフは、㈱東京商工リサーチの「2020年「休廃業・解散企業」動向調査」からの廃業・解散企業の現状です。2019年には2018年より若干減少していますが2020年には感染症の流行により49,698件となりました。これは調査開始以来最多の件数です。
次のグラフは休廃業・解散企業の代表者の年齢についてのものです。「70代」「80代」を合わせた70代以上が年々増加していることが確認できます。2020年では「70代」が41.8%、「80代」も合わせると59.7%になります。
次のグラフは、先の休廃業・解散件数のデータに経営者の平均年齢を重ねたものです。経営者の平均年齢は高齢化しており、休廃業・解散件数が増えている一因になっていることが伺えます。
中小企業が、休廃業・解散するのは業績不振だけが原因とは言えません。2018年から2020年にかけて休廃業・解散した企業の売上高当期純利益率を見ると、5%以上の企業が約4分の1程度存在することが分かります。高利益率の企業であっても休廃業・解散していることから、やはり経営者の高齢化その一因となっていることが伺えます。
経営者の年齢は、事業展開に何か影響を与えているのでしょうか。
次のグラフは、経営者の年齢別に新事業分野への進出の状況について調べたものです。年齢の若い経営者ほど新事業分野への進出に取り組んでいることが分かります。
新事業分野への進出には設備投資が伴うケースが多いです。そこで経営者の年齢別に設備投資の状況を調査したものが次のグラフです。やはり経営者の年齢が若いほど、設備投資を行っているようです。尚、このデータでは設備の維持・更新のための投資は省いています。
経営者が高齢になると、事業を誰かに承継するのか廃業するのかを決める必要が生じてきます。経営者はどれくらいの年齢で事業承継や廃業を予定しているのでしょうか。次のグラフでは、「60歳から65歳未満」が11.2%、「65歳から70歳未満」が22.0%、70歳から75歳未満」が20.9%となっています。経営者の平均年齢が62.2歳でしたので、今後、多くの企業が事業承継や廃業を行うことになります。
(図表は2021年版中小企業白書より引用)