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事業環境の分析

事業環境の分析

 

経営理念・ビジョンを実現するためには、経営戦略や経営戦術が必要となります。そして経営戦略を立案するには、自社を取り巻く外部環境や自社内の内部環境の分析が必要となります。

具体的に中小企業は、外部環境や内部環境をどのように分析しているのでしょうか。

まずはマクロ環境の分析について、その情報の収集と分析状況について見てみます。

 

 

マクロ環境の分析手法としてPEST分析がよく用いられます。PEST分析とは、「政治(Politics)…法律・規制・税制等」「経済(Economy)…景気動向・経済成長・金利・為替・株価等」「社会(Society)…人口動態・世論・社会の意識等」「技術(Technology)…技術革新・特許・IT関連等」という4つの要因に着目してマクロ環境を分析する手法です。

アンケートの結果では、いずれの項目でも約8割の企業が情報収集を行っています。しかし、実際に戦略に反映させているのは2割にも達していません。

次にミクロの分析として、自社の属する市場に関しての分析状況を見てみましょう。

 

 

市場分析の手法としては、5フォースモデルが有名です。5フォールモデルとは、①自社が既に活動している市場、②販売先である顧客、③原材料・部品等の仕入れ先、④自社の製品に代わりえる代替品、⑤市場への新たな参入者の5つの観点で市場を捉える分析手法です。

「分析を行い、経営戦略に反映させている」企業が、「自社製品・サービスの市場動向」が35.0%、「顧客の動向」が37.0%となっています。これらは日々の事業活動で入手できる情報であり、分析しやすく経営戦略に反映できているのでしょう。

一方、「代替製品の動向」が15.9%、「潜在的な新規参入企業の動向」が11.6%と分析を行い、経営戦略に反映させている企業が少ないのが分かります。これらの項目は日々の事業活動では認識しにくい項目であり、情報の収集も難しい面があると思われます。

自社の属する市場の分析手法としては、3C分析が有名です。3C分析とは、「顧客(Customer)」、「自社(Company)」、「競合(Competitor)」の3つのCの要因で市場を分析する手法です。

下のグラフは競合他社についての情報収集と分析の状況です。

 

 

3Cのうち自社製品と顧客に関しては、市場環境の情報収集・分析状況で確認しました。それに比べると競合他社に関しては、その情報を分析して経営戦略に反映させている割合は低くなっています。収益性に関しては、そもそも情報収集が難しいようです。

 

外部環境の分析の状況を確認した後は、自社内の内部環境の分析です。内部環境の分析では、様々な観点で分析が可能ですが、ここでは「財務」、「組織」、「バリューチェーン」、「マネジメント」、「製品」の観点で調べています。

 

「財務」と「組織」に関しては、「分析を行い、経営戦略に反映させている」企業が多いことが分かります。両項目に関しては、少なくとも分析を行っている企業が半数以上存在しています。

バリューチェーン」に関しては、情報収集すら行っていない企業が25.3%も存在します。情報収集を行っている企業がどのような取組を行っているのか、調査してほしいものです。

以下の3つのグラフは、外部環境と内部環境の項目ごとに、「全て経営戦略に反映させている」企業と、「全て少なくとも分析を行っている」企業、「その他」の企業に分けて労働生産性の水準を確認したものです。

 

各項目において「全て経営戦略に反映させている」企業の労働生産性が高いことが確認できます。事業環境の分析を行い、その結果を経営戦略に反映させることが収益を向上させる一助になっている可能性が高いと思われます。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)