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中小企業における理念・ビジョンの浸透

中小企業における理念・ビジョンの浸透

 

経営理念やビジョンは策定しただけでは機能しません。組織内に浸透してこそ経営理念やビジョンの実現がなされます。

2022年度中小企業白書では、(1)認知、(2)理解、(3)共感、(4)行動の4段階に経営理念・ビジョンへの従業員の受け止め方を分類しています。

 

 

これをみると(1)認知の段階を超えて、(2)理解以上の(3)共感、(4)行動まで反応している企業は8割以上存在していることが分かります。前回の経営理念・ビジョンの条件である「明確さ」と「共有」の観点で見てみると、これら8割の企業では「明確さ」がある程度満たされていると考えられます。一方、「共有」に関しては、「共感・共鳴しており、行動に結びついている」企業が47.0%でしかないことから、約5割弱の企業の課題であることが分かる。

その経営理念・ビジョンの受け止め方や反応別に、組織内への浸透の度合いを確認したのが下のグラフです。

 

 

「共感・共鳴しており、行動に結びついている」企業では、70.1%もの企業が「全社的に浸透している」と回答しています。「共感・共鳴しているが、行動に結びついていない」企業では、23.0%の企業しか全社的に浸透していませんので、その差は明らかです。全社的に浸透しているからこそ、経営理念・ビジョンが行動に反映されるのでしょう。

組織への浸透状況が労働生産性に影響を与えているのか。

これを確認したのが下のグラフです。

 

 

「全社的に浸透している」企業では、大きく労働生産性が増加しています。「役職員の一部まで浸透している」の4倍以上の数値です。

では経営者は経営理念・ビジョンの浸透に向けて何が重要だと考えているのでしょうか。経営理念・ビジョンの浸透状況別に見たのが下のグラフです。

 


「全社的に浸透している」企業では、「経営者からの積極的なメッセージの発信」が70.3%と高い値を示しています。まずは自らが経営理念・ビジョンを発信していくことが経営者の責務と言えるでしょう。

では実際に経営理念・ビジョンの浸透に向けてどのような行動や取組を行っているのでしょうか。

 

 

「従業員との日々のコミュニケーションでの啓もう」と「経営者による年頭挨拶や社内会議での訓示」が高い割合を示しています。地道に折に触れて経営理念・ビジョンを従業員に伝えることで、浸透させていることが伺えます。

最後に経営理念・ビジョンの浸透状況別に、浸透した効果を見てみましょう。

 

 

その効果に関して白書では、次のようにまとめています。

「従業員に与えた効果として、自律的な働き方の実現やモチベーション向上を実感す
る割合は全社的に浸透している状況に近づくほど、高い傾向となっている。また、自
社に対するエンゲージメントの高まりも見て取れる。経営理念・ビジョンが浸透した
ことで、従業員の行動変容につながり職場の活性化に寄与している様子がうかがえる。 企業自体の事業活動に関する効果として、経営判断のよりどころとなっている割合
も全社的に浸透している状況に近づくほど、高い傾向となっている。自社の存在意義
や目指すべきゴールに対する従業員からの賛同を得ていることで、経営理念・ビジョ
ンに軸足を置いた経営判断を下しやすくなった可能性も考えられる。顧客・取引先と
の関係強化についても同様の傾向が見られる。ステークホルダーを念頭に置いた経営
理念・ビジョンを掲げる企業が多い中で、組織全体がステークホルダーとの関係を意
識した企業活動を行っている結果、対外的な関係強化につながったと考えられる。」

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)