マネジメントの第一歩

ビジネスのヒントを綴っています

ブランドの構築・維持への取組

ブランドの構築・維持への取組

 

2022年版中小企業白書では、中小企業が付加価値を高めながら成長するための方策として「無形資産」の活用を提言しています。

無形資産は、有形資産と比べて4つの特徴がある、と言われます。この4つの特徴はScalability(スケーラビリティ…大規模化が容易)、Sunk(サンク…コストの回収が容易)、Spillover(スピルオーバー…他への拡張性)、Synergyシナジー…相乗効果)であり、アルファベットの最初のSを取って「4S」と言われています。

特許権などの知的財産権やノウハウなど無形資産にも様々な種類がありますが、2022年版中小企業白書ではブランドに関して調査しています。

まずはブランドの構築と維持に関しての調査結果です。

 

ブラントの構築・維持に「取り組んでいる」と回答した割合が36.8%、「取り組んでない」と回答した割合が63.2%となっています。製造工程の一部を請け負う加工業などブランドを構築しにくい業態もあることから必ずしもこのデータから中小企業ではブランドが活用されていない、とは言えないかも知れません。しかし、まだ3分の2の中小企業においてブランドを構築し、活用していく余地があることは間違いありません。

次に取引先の属性別にブランドの構築・維持について調査しています。

 

取引先が消費者である中小企業では52.5%と半分以上がブランドの構築・維持に取組んでいます。消費者向けであることから、最終製品を取り扱っている企業が多いことが推察できます。

一方、取引先が事業者である中小企業では、ブラントの構築・維持に取り組んでいるのは34.0%の割合です。

どちらにしてもまだまだブランド構築・維持に取り組む中小企業が増えて行くことを期待したいと思います。

下のグラフで、そのブランドの構築・維持に取り組むことが売上総利益にどのような影響を与えているかが確認できます。

 

ブランドの構築・維持に取り組んでいる企業では売上高総利益が24.0%であり、取り組んでいない企業の22.8%より若干高い値になっています。

売上高総利益率が高いということは、他社と差別化が図られ価格交渉力が強いことが推察できます。その点をブランドの取引価格への寄与で確認しましょう。

 

ブランドの構築・維持に取り組んでいる中小企業は、ブランドが取引価格に「大いに寄与している」割合が10.9%です。「ある程度寄与している」の45.0%を合わせると、55.9%と半分以上なります。価格交渉力を強化する一つの方法として、ブランドの構築・維持があることが分かります。

ではブラントの構築・維持には、どのような取組が行われているのでしょうか。

 

 

「顧客や社会へのブランドメッセージの発信」が48.8%と最も高い割合となっています。まずは自社のブランドを知ってもらうことからブランドの構築・維持が始まります。また「自社ブランドの立ち位置の把握」が42.0%、「ブランドコンセプト(ターゲットや提供価値)の明確化」が38.0%であり、競争環境を意識した回答も高い割合です。

ブランドに関してもう一点確認しておきましょう。

ブラントの構築・維持に取り組む企業は、どんなフランド要素を活用しているのでしょうか。

 

「企業のロゴ、マーク」が53.4%、「商品・サービスの固有名詞」が47.5%と他の要素と比べて高い割合を示しています。「企業・商品・サービスなどのブランドカラー」や「キャッチフレーズ・スローガン」などの回答は20%台であり、まだまだ活用できるブランド要素があることが伺えます。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)