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ローボールテクニック

ローボールテクニック

一旦、提案を受け入れると、直後に条件を引き上げられても同意してしまう心理。

 

【解説】

ローボールテクニックは、 アリゾナ州立大学のロバート・チャルディーニ教授の実験で知られるようになりました。その実験とは、学生を2つのグループに分け、実験への参加をお願いしました。一つのグループには、「朝の7時から開始する実験に参加してくれるかどうか」を尋ねました。そんな早く大学に来ないといけないのか、と考えたためでしょうか、承諾率は31%に過ぎません。

もう一方のグループにはまず実験に参加するかどうか、を先に尋ねます。その承諾を得てから朝の7時に開始する、と告げました。すると承諾率は56%だったのです。

最初に低い要求から始めることから、低いところにボールを投げるの例えとして「ローボールテクニック」と呼ばれています。

人は最初に承諾してしまうと、後から面倒な条件を出されても断りにくくなるのです。一旦、承諾している以上、断ることに罪悪感を感じてしまうのです。

 

 【信憑性】

 この法則の背景には心理学でいう「一貫性の原則」があります。一貫性の原理とは、人はその言動や態度を一貫して保ちたがる、という心理のことです。

なぜ人はその言動や態度に一貫性を保とうとするのか。それには以下のような理由があります。

①他人の目を気にする

コロコロ言動や態度を変えると、周囲の人から「あの人は信用できない人」と見られてしまいます。一旦決めたことを覆すことで信用をなくさないために、不利な条件を追加されても承諾してしまうのです。

 

②断るのにエネルギーを要する

承諾したことを断るには相手を説得しなければなりません。断る理由を説明したり、態度を変えたことを謝罪する必要も生じるでしょう。そのためにはそれなりの時間とエネルギーを要します。よほどの事でない限り「まあいいか」と自分を納得させてしまうのです。

 

【適用例】

この手法は一種のだましですから、使用するには注意が必要です。

・「閉店セール 50%引き」のうたい文句に惹かれて店内に入り、商品を選んでレジに並ぶと「これはセール対象外です」と正規の価格での支払いを要求された。

・「お買い得です」と勧められ購入の意思を示したところ、あれやこれやとオプション品を勧められ、結局まとまった金額の買い物になってしまった。

これらはローボールテクニックを使った商売の例です。初めからセール対象外であることやオプションが必要と分かっていれば、そもそも買うつもりはなかった。不十分な情報しか与えず、購買の決定をした後で条件を追加してきますので、タチが悪い。そこで売る方は、伝えるのを忘れていた、とかいかにも申し訳なさそうに謝罪をしながら条件を追加してきます。

そのような場合、断固として断りましょう。

 

尚、同じような手法としてフット・イン・ザ・ドアがあります。フット・イン・ザ・ドアは徐々に要求のレベルを上げていく手法であり、その要求自体は異なっています。ですがローボールテクニックは、いわば後出しジャンケン的に要求を満たす条件を付けくわえていく点が異なっています。