共有地の悲劇
多数の者が利用できる共有資源は、乱獲が発生してやがて枯渇してしまう。
【解説】
共有地の悲劇は、「コモンズの悲劇」とも言われる経済学における法則です。アメリカの生物学者ギャッレット・ハーディンがサイエンスに発表した論文で知られるようになりました。
例としてよく取り上げられるのが、牧草地で複数の農民が羊を放牧するケースです。牧草地の草は有限です。一人の農民が自分の利益を増やそうとして羊を増やせば、その分、他の農民の羊の餌が減少します。あいつは得をするが自分達は損をしている、と考えた他の農民も羊を増やせばどうなるでしょう。我も我もと、羊を増やしていく。行き着先は、牧草地が食い尽くされ残ったのは荒れ地となってしまいます。
牧草地が適正に管理されていないことから起きる現象です。
【信憑性】
次の2つの条件が揃った時、共有地の悲劇が発生します。
①共有地には誰でもアクセスできる
②共有地の資源が有限であり、無秩序に狩ると枯渇してしまう
地球環境問題も共有地の悲劇の例として取り上げられます。無秩序なCO2の排出を行っていたため、地球温暖化が進展しています。国際的なCO2削減の取り組みも行われていますが、新興国と先進国を同じように扱ってもよいのかという問題もあり、必ずしも足並みは揃っていません。クロマグロに代表される水産資源の乱獲も問題となっています。
【適用例・対策】
共有地の悲劇が起きると、各人が自分の利益を増やそうと行動するあまり、希少な資源が枯渇してしまいます。結果として、社会全体では損失を受けてしまいますので、避けるべき現象です。
牧草地ならば、分割して所有権を設定すれば解決できますが、分割できないものは解決が困難です。方法として、電波の様に国が一括管理して電波使用料を徴収し事業者に電波帯域の使用を認める権力による管理があります。また市場原理を利用する排出権取引などもあります。
尚、共有地の悲劇は、資源の過大な利用によって発生しますが、資源の過小な利用によって発生する社会的な不利益を「アンチコモンズの悲劇」と呼びます。
「アンチコモンズの悲劇」の代表例は、研究成果が特許によって権利化されることにより、社会全体で利用することが困難になるケースです。このため特許法では、試験研究のために実施する場合は、特許の権利が及ばないことを規定しています。これにより改良発明や新たな発明がなされることを奨励しています。