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バーチャルエンジニアリング

バーチャルエンジニアリング

 

3DCAD、CAM、CAEにIoTやAIが加わり進化しているバーチャルエンジニアリング。

バーチャルエンジニアリングによって、企画や製造等の社内の各分野のみならず社外の供給業者、顧客まで含めて3Dデータに基づいた共同での製品開発が行えるようになります。既存の社内外の経営資源を再構成でき、ダイナミック・ケイパビリティの能力の一つである「捕捉」を高めることにもなります。

また構想段階で製品のシミュレーションが行えるため、開発リードタイムの短縮が実現します。

 そこで日本の製造業にバーチャルエンジニアリングがどこまで浸透しているのかデータで確認いたしましょう。 

 

まずは3DCADの普及率です。

 

          3DCADの普及率(設計方法)

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 バーチャルエンジニアリングでは設計図面のみならず各部署との情報共有も3Dデータで行うことが基本になります。ところが「3Dデータでの設計」は17.0%に留まっています。また「2Dデータでの設計」が26.5%、「設計に関してはデータ化していない」が12.2%も存在しています。約4割が全く3Dデータを扱っていないという結果でした。

次は、協力企業への設計指示を伝える方法です。

 

           協力会社への設計指示の方法

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 「3Dデータ」は、15.7%の企業しか使用していません。一方、54.3%もの企業がいまだに「図面」で協力会社に設計指示を行っているのです。

なぜ3D化が進まないのか。その理由は次のグラフから知ることができます。

 

          2Dデータや図面で設計指示している理由

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「主な設計手法は2D/図面のため」というもっともな理由が51.7%。「取引先の調達部門が見積もりのために図面を必要とするため」という取引上の制限が31.0%。また「契約上の縛り」も10.9%あります。

「発注内容と現物を照合する現品票も兼ねているため」が16.7%、「3Dデータから製造/検査作業の指示ができないため」が10.1%と社内の業務上の都合を理由とする企業も存在します。

 

 一方、バーチャルエンジニアリングの効果を確認したのが次のグラフです。

 

      製品設計力の5年前に比べての変化と設計法の関係 

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 すると3DCADを導入している企業ほど製品設計力が向上しています。

これは次の製品設計リードタイムへの影響からも確認できます。

 

     製品設計のリードタイムの5年前に比べての変化と設計方法の関係

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 3DCADを導入している企業ほど、製品設計リードタイムが短縮されています。

 工程設計力を確認しても、同様です。

 

       工程設計力の5年前と比べての変化と設計方法の関係

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やはり3DCADを導入している企業ほど、工程設計力が向上していることが確認できます。

 

バーチャルエンジニアリングを進めることはダイナミック・ケイパビリティを高めることになるのですが、現在のところ、まだまだバーチャルエンジニアリングの導入が進んでいないのが日本の製造業の実態です。

白書では、バーチャルエンジニアリング環境の遅れは、我が国製造業のアキレス腱になりかねない、と懸念しています。

 

(図表は2020年度版ものづくり白書より引用)