製造業のデジタル化に必要な人材
日本の製造業の人材不足は年々深刻化しています。デジタルエンジニアリングを進めるには、特にこれまでとは異なる人材が求められます。
そこでまずは製造業全体での人材確保の状況を見てみます。
製造業における従業員の不足感(規模別ID)
グラフ中央の「0」より上であれば「過剰」が「不足」を上回り、下であれば「不足」が「過剰」を上回ります。グラフより2014年以降、「不足」が「過剰」を上回り、製造業では人手不足であることが読み取れます。但し、2018年以降「不足」感が和らぎ、また大企業と中小企業の規模間の差が縮小傾向にあります。
ではデジタルエンジニアリングに必要なIT人材についてはどうでしょうか。
IT人材の「量」と「質」の不足感
IT人材に関しては「量」「質」共に不足感が高くなっています。しかも2018年の「大幅に不足している」は、「量」で37.5%、「質」で31.8%とどちらも2016年から増加傾向にあります。
製造業のデジタル化に不可欠な人材として、数学の知識や能力を有する者が挙げらます。数学の能力は、デジタルエンジニアリングにおいてデータ分析、モデリング、シミュレーション等に発揮されます。ダイナミック・ケイパビリティにおける「感知」の能力を高めるにも必要となります。
しかし、数学の博士後期課程を修了した者は多くが高等教育機関に進み、民間企業等に進むものは少ないのが現状です。次のグラフは、日本の数学の博士課程修了者とアメリカのPhD(数理科学)修了者の進路を比較したものです。
博士課程、PhD修了者の進路(日米)
日本の博士課程修了者の進路として民間企業等は12%程度です。2013年より増えてはいます。しかしアメリカでは2015~2016年では全体の約30%が民間企業等に進んでいます。そもそもPhD修了者は日本の博士課程修了者の10倍以上であり、ポテンシャルがちがいます。
日本においても若手の数学者が学術界のみならず製造業でも活躍できる機会の増大が望まれます。
(図表は2020年度版ものづくり白書より引用)