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設計力強化戦略(1)

設計力強化戦略(1)

エンジニアリングチャーンとサプライチェーンの連携の意義について論じるには、前提としてエンジニアリングチャーンの重要性の理解が不可欠です。

製造業では、製品品質とコストの8割が設計段階で決まると言われいます。

次の図は、設計変更の自由度と品質・コストの確定度を表したものです。

 

        設計変更の自由度と品質・コストの確定度

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製品の企画段階では設計変更の自由度が高く、設計が進むに従い製品の仕様が固まっていきます。製造段階では設計通りに生産することが求められ、仕様変更の自由度はほぼありません。これに対して仕様が決まっていない企画段階では、品質やコストも白紙の状態です。仕様が決まっていくに従い要求される品質や必要なコストが決まり、製造段階では設計品質の実現、予定されたコストの順守が求められます。

このため開発の初期段階に経営資源を集中して投入するフロント・ローディングにより、問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダを省くことが重要になります。

その様子を表したものが下図です。

 

        フロントローディングによる作業不可の軽減

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近年、SDGsに代表される環境負荷低減の社会的課題、制御ソフトウェアの使用比率向上などにより製品に求められる機能が高度化・多様化しています。製品が複雑になればなるほど、エンジニアリングチャーンに掛かる負荷は大きくなります。仕様変更に対応する「製品設計」と仕様変更に対して柔軟に対応できる「工程設計」の重要性がますます高まっているのです。

では製品設計力は5年前と比べてどのように変化しているのでしょうか。

 

         製品設計力の5年前に比べての変化

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「向上している」と回答している企業は41.0%に対して「あまり変化はない」の回答が54.1%です。

次に設計を取り巻く環境の変化を確認します。製品設計のリードタイムの5年前との比較では、次のデータが示されています。

 

        製品設計のリードタイムの5年前と比べての変化

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「あまり変わらない」との回答が56.2%。「短くなっている」の回答が37.1%あります。ではそのリードタイム短縮にどのように対応しているのでしょうか。

 

  製品設計のリードタイム短縮を図るための取り組みとして重視しているもの

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「生産技術、製造、調達といった他部門との連携促進」が53.4%と半数以上となりました。また「標準化、モジュール化の推進」39.3%も他部門が関係してくる取り組みです。これに対して設計部署内のみでの対応となる「3DCAD/CAEの導入」は37.8%、外部資源の活用となる「アウトソーシングの活用が」19.2%の割合です。

社内の他部門との連携としてのエンジニアリングチャーンとしての機能強化が、リードタイム短縮に必要となっています。

 

(図表は2020年度版ものづくり白書より引用)