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日本の製造業におけるデジタルトランスフォーメーション

日本の製造業におけるデジタルトランスフォーメーション

 

ダイナミック・ケイパビリティの「変容」をもたらすデジタルトランスフォーメーション。

日本では2017年3月に政府が”Connected Industries(コネクテッドインダストリー)”というコンセプトを提唱しました。”Connected Industries”とは、データを介して機械、技術、人など様々なものがつながることで、新しい付加価値の創出と社会課題の解決を目指す産業の在り方です。具体化するカギは最新のデジタル技術であり、製造業に大きな変革(デジタルトランスフォーメーション)をもたらします。

下図は製造工程を、研究開発ー製品設計ー工程設計ー生産などの連鎖である「エンジニアリングチェーン」と、受発注ー生産管理ー生産ー流通・販売ーアフターサービスなどの「サプライチェーン」の2つの流れとして認識し、製品や生産技術に関するデータがこの2つのチェーンを通って結び付き、付加価値を生み出す過程を表したものです。

 

        想定し得るソリューションの例とその位置づけf:id:utann:20201021094819j:plain

エンンジニアリングチェーンでは、強化された計算能力やAI等を研究開発に活用する「R&D支援」、顧客の仕様データなどを分析する「企画支援」、モデルベール開発を始めとする「設計支援」などがあります。

サプライチェーンでは、工場ごとの繁閑期の平準化などを可能とする「共同受注」、デジタル化による匠の技の継承を容易にする「技能継承」、サプライチェーンの連携などによる「物流最適化」、顧客の使用データなどを分析する「販売予測」、設備・機器の「予知保全」「遠隔保全」などがあります。

さらに白書では、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンをシームレスに繋ぐことで「生産最適化」、「マスカスタマイゼーション」が可能になるだけでなく、「サービタイゼーション」あるいは「ことづくり」といった新たなビジネスの設計も容易になる、としています。

 

では日本の製造業はどこまで生産工程のデータ収集を行っているのでしょうか。

次の会計年度ごとの4つのグラフで取り組みの現状を見てみましょう。

 

    個別工程の機械の稼働状態について「見える化」を行っているか

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  ライン・製造工程全般の機械の稼働状態について「見える化」を行っているか

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        人員の稼働状態の「見える化」を行っているか

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   データ化・見える化や検査工程の自動化・IT化に取り組んでいるか

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4つのグラフでは共に「実施している」が少しずつですが増えています。しかし、「実施予定なし」「別の手段で足りている」を合わせると25~35%にもなり、製造工程のデジタル化が進んでいない様子が伺えます。

 

次のグラフは、複数部門間での情報・データの共有について、販売後の製品の動向や顧客の声を設計開発や生産改善に活用しているか、確認した結果です。

 

   設計開発・生産・販売など、複数部門での情報・データ共有について

   販売後の製品の動向や顧客の声を設計開発や生産改善に活用しているか   f:id:utann:20201021095004j:plain

「実施している」と回答した企業は、2019年度は8.4%となり2017年度の15.8%から7.4%も減少しています。

”Connected Industries”を提唱しながらこの状況です。さらに新型コロナウィルスの感染拡大による不確実性が増す中、今後の投資が停滞することが懸念されます。

 

 (図表は2020年度版ものづくり白書より引用)