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中小企業の労働生産性

中小企業の労働生産性

 

 住民基本台帳によると日本の人口は2009年の1億2707万人をピークに減少を続けています。人口の減少は15歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少でもあり、経済成長にブレーキを掛ける原因となります。

人口が減少する中で経済成長を目指すには、労働者の生産性を向上させる必要があります。では中小企業・小規模事業者の労働生産性の現状は、どのような状況なのでしょうか。

次のグラフは企業規模別に従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)の推移を示したものです。まず製造業、非製造業共に大企業の労働生産性は中小企業の労働生産性の2倍以上であることが分かります。更に中小企業で見た場合、製造業と非製造業との間にはほとんど差はなく、2003年から横ばい状態であることが確認できます。

尚、2021年版中小企業白書では労働生産性の算出に当たり、厳密には分母を「労働投入量(従業員数×労働時間)」とするべきであるが、統計データの都合上、「従業員数」を用いていることを注釈しています。

 

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更に企業規模別に労働生産性の水準を見ましょう。財務省の「法人企業統計調査年報」では資本金10億円以上の企業を「大企業」、資本金1億円以上10億円未満の企業を「中堅企業」、資本金1億円未満の企業を「中小企業」としています。

次のグラフは、その企業規模別にに労働生産性の上位10%、中央値、下位10%の値を示しています。いずれの値においても企業規模が大きくなるにつれて、労働生産性が高くなっています。さらに上位10%と下位10%の差も大きくなっています。

中小企業と大企業の値に着目すると、中小企業の上位10%の値である1,400万円は大企業の中央値である1,158万円を上回っています。また中小企業の中央値である577万円は大企業の下位10%である501万円を上回っています。中小企業でも大企業並みの労働生産性を実現している企業もあれば、規模が大きいにも関わらず中小企業並みの労働生産性しか実現できていない企業も存在することが分かります。 

 

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次のグラフは企業規模別に業種別の視点も加えた労働生産性の中央値のデータです。これによると全て業種で企業規模が大きくなるにつれて労働生産性が高くなっていることが確認できます。

 

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業種別に企業間規模の違いによる労働生産性の違いを倍率で見たものが次のグラフです。業種でのバラツキはありますが、「小売業」では中小企業に対する大企業の倍率は1.4とその格差が比較的小さいことが分かります。しかし、現在小売業の店舗では無人レジの導入が進められています。当然、大企業は無人レジへの設備投資を行うため、今後は倍率が開いていくのか気になるところです。

 

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(図表は2021年版中小企業白書より引用)