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リスクへの対応 BCPの策定

リスクへの対応 BCPの策定

 

 災害発生時に企業が損害を最小限度にとどめ、素早く事業を継続するための計画をBCPと呼びます。BCPは、Business Continuity Pianningの略であり、BCPを策定して運用していく経営を事業継続マネジメント(BCM)といいます。

ではBCPはどの程度、普及しているのでしょうか。次のグラフで確認しましょう。

大企業でBCPを「策定している」の企業の割合は31%、「現在、策定中」は12%です。一方、中小企業では「策定している」が14%、「現在、策定中」が9%となっています。やはり中小企業より大企業の方がBCPに積極的に取り組んでいるようです。

但し、中小企業でも「策定を検討している」の27%まで含めると、丁度50%の企業がBCPに関して前向きな態度であることが伺えます。

 

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前回、ここ近年の大きな自然災害を確認しましたが、実際の災害の発生がBCPに対する態度にどのように影響を与えているのでしょうか。

この問いには、BCPへの考え化を時系列でみれば確認することができます。勿論、実際に何らかの被害を受けた企業とそうでない企業ではBCPの取り組みに温度差があるでしょう。それを踏まえたうえでデータを見てみると2018年と2019年ではほぼ変化なし、2020年なりますとBCPへの取り組みに若干の変化があるようです。

 

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 なかなか進まない中小企業のBCPへの取り組みですが、何が障壁となっているのでしょうか。次のグラフは、BCPを策定していないと回答した企業に、その理由を尋ねたものです。すると「策定に必要なスキル・ノウハウがない」「策定する人材を確保できない」「書類づくりで終わってしまい、実務的に使える計画にすることが難しい」など体制側の問題があるようです。

また目を引くのが「必要性を感じない」と答えた企業が20.7%も存在することです。

2021年版中小企業白書では触れていませんが、業種によってBCPへ取り組む態度が違うこともあるかも知れません。

 

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BCPに前向きに取り組んでいる企業は、どのようなリスクを想定してBCPに取り組んでいるのでしょうか。次のグラフは、BCPを「策定している」、「現在、策定中」、「策定を検討している」と答えた企業に事業の継続が困難になると想定しているリスクを聞いたものです。

2019年の感染症流行前では「感染症」と答えた企業は23.2%でしたが、2020年になると69.4%と約3倍になっています。2020年で約7割の企業が「感染症」をリスクと認識していることになり、現在調査すれば更にその割合が上昇しているのでしょうか。

また「取引先の倒産」が31.6%から41.%に増加しているのは、経営環境の厳しさが反映されているのでしょうか。

 

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BCPを策定している企業にとって、BCP策定がどのような効果を生じているかを調べたのが次のグラフです。最も多い回答は「従業員のリスクに対する意識が向上した」であり56.7%に達しています。「事業の優先順位が明確になった」が39.2%、「業務の改善・効率化につながった」が32.9%と続き、BCPの策定が事業を見る目や業務のあり方にまで効果を及ぼしていることが確認できます。これはBCP策定のプロセスが、事業や業務を今一度見直すことに繋がったためと考えられます。

また白書では「取引先からの信頼が高まった」との回答が2割程度あることに着目し、BCPの策定が社内だけの効果にとどまらず、持続的な取引関係の構築にも資する、と指摘しいます。

 

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 中小企業庁のホームページには「中小企業BCp策定運用指針」が公表されています。

BCP策定の際にご参考にしてください。

www.chusho.meti.go.jp

 

(図表は2021年版中小企業白書より引用)