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中小企業のM&Aの実態

中小企業のM&Aの実態

 

 今やM&Aも事業承継の一つの手段として、中小企業にも活用されています。

まず2021年版中小企業白書では、株式会社レフコデータの調査によるM&Aの件数を紹介しています。近年、M&Aの件数は増加傾向にあり、2019年には過去最高の4,88件となっています。202年度は感染症の影響もあってか若干減少し3,730件です。

尚、白書ではM&Aは公開になっていない案件もあることから、実際にはもっと件数が多いだろうと推察しています。

 

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 M&Aの増加の背景には、どのような経営者の意識の変化があったのでしょうか。

次のグラフは10年前と比較したM&Aに対する中小企業の意識の変化です。すると買収することについて「プラスのイメージになった」との回答が33.9%となり「マイナスのイメージになった」の3.9%よりも30Ptも多くなっています。また売却(譲渡)することについても「プラスのイメージになった」が21.9%に対して「マイナスのイメージになった」は7.6%に留まっています。

ここ10年で中小企業のM&Aに対する意識が大きく変わったことが確認できます。

 

 

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では実際に自社においてM&Aを実施する意向はあるのでしょうか。

次のグラフで確認すると、約3割の企業でM&Aを実施する意向があることが分かります。「買い手として意向あり」が19.1%、「売り手として意向あり」が5.6%であり、「買い手・売り手ともに意向あり」の企業も4.1%存在しています。

 

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中小企業は、M&Aの相手としてどのような規模の企業を希望しているのか。M&Aの意向別に希望する相手の規模を確認したのが次のグラフです。「買い手として意向あり」の企業では、78.5%もの企業が「自社より小規模」な企業を希望しています。

片や「売り手として意向あり」の企業では、81.0%もの企業が「自社より大規模」な企業を希望しています。M&Aですので、買う側は自社より規模の小さい相手を希望し、売る側は自社よりも大きな規模の相手を希望するのは順当な結果かと思いますが、丁度パーセエンテージが78.5%と81.0%と同等なのが興味深いところです。

 

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相手先に希望する規模の次は、希望する業種です。「買い手として意向あり」の企業では「同業種」が54.2%、「異業種・業種関連あり」が37.6%です。合わせて91.8%もの企業が自社と関連する業種を希望しています。買収するメリットを生かすには、自社と関連する業界の企業の方が向いていると考えているのでしょう。

一方、「売り手として意向あり」の企業では「異業種・業種関連なし」が30.7%であり、業種に拘らず幅広くの企業を相手先として検討しているようです。

 

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M&Aの形態としては「垂直統合商流の川上や川下企業との統合)」か「水平統合(同業種同業態との統合)」の2形態があります。そのどちらを希望するのか、を確認したのが次のグラフです。すると「買い手として意向あり」の企業も「売り手として意向あり」の企業もともに「水平統合」を希望していることがわかります。また「売り手として意向あり」の企業では、56.8%もの企業が「どちらとも言えない」と回答しています。従業員のことなどを考えると、具体的に相手が特定されないと検討できないことが背景にあるのでしょうか。

 

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(図表は2021年版中小企業白書より引用)