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人的資本への投資(1)

人的資本への投資(1)

 

企業経営に用いられる経営資源と言えば「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」です。このうち「ヒト」は他の経営資源を活用する存在であることから、特に重要な資源です。また獲得した後の教育・訓練や報酬により、そのパフォーマンスに大きな差が生まれる資源でもあります。

では企業が人的資源の活用に向けて、どのような取組を行っているのか、確認致しましょう。

まずは人的資源に対する企業側の意識を確認します。

 

 

企業が経営課題として重視している項目では、「人材」が82.7%と最も高い値を示しています。

では企業は従業員にどのようなスキルを求めているのでしょうか。


5年前も現在も「チームワーク」「コミュニケーション力」「職種特有の技術力」が高い値を示しています。また、それぞれ5年前よりも現在の方が高くなっています。この5年で特に伸びたのが「マネジメント」と「IT」です。ITが経営における重要度を増していることは自明の理です。「マネジメント」とは多様な側面を含みますが、上司からの命令で仕事をするのではなく従業員一人一人が自らの考えで仕事をしていくことが求められているかと思います。

「ヒト」という経営資源に有効に働いてもらうには、能力開発が不可欠です。その能力開発の目的を業種別に調査したのが下のグラフです。

 

建設業では68.0%、情報通信業では67.1%と「技術力向上」が高い値を示しています。製造業でも「技術力向上」は60.2%と高い値を示していますが、それ以上に「生産性の向上」が66.7%と最も高くなっています。

一方、卸売業や小売業、サービス業・その他では、「顧客満足の向上」がそれぞれ57.9%、61.3%、56.2%と最も高い値となっています。

能力開発は直ぐに効果が出るものではなく、計画的に長期的に取り組む必要があります。企業の能力開発に取り組む姿勢と、能力開発の計画やその方針の有無を調査したのが下のグラフです。

 

 

能力開発に積極的な企業ほど、能力開発計画を策定し方針もキチンと立てていることが分かります。また従業員にどんな人物像を求めているのか、どのような従業員になって欲しいか明確にする必要があるでしょう。

 

 

やはり能力開発に積極的な企業ほど「求職者や従業員に人物像を公表している」「公表していないが、人物像を明確にしている」の回答が多くなっていることが確認できます。

その能力開発計画や方針の有無が売上高の増加に貢献しているのか、を調査したのが下のグラフです。

 

「明文化された能力開発計画や方針がある」と答えた企業の売上高増加率は11.6%と非常に高い値となっています。「明文化されていないが能力開発計画や方針がある」の企業の売上高増加率が7.5%ですから、能力開発計画や方針があるならば、是非とも明文化すべきです。

2022年版中小企業白書では、求める人材像や従業員の目指すべき姿を明確化していることが売上高増加率に与える効果も調査しています。

 

「求職者や従業員に人材像を公表している」企業は10.7%の売上高増加率を達成しています。「公表していないが、人物像を明文化している」企業でも9.8%の売上高増加率です。まずは人物像を想定し明文化する。そして、公表することで収益性を向上させることができるのです。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)