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人的資本への投資(2)

人的資本への投資(2)

 

前回は重要な経営資源である「ヒト」への能力開発の取組を確認致しました。

今回は具体的な能力開発の実施状況に関して見ていきます。

能力開発には代表的な方法として、OJT、OFF‐JT、自己啓発の3種類があります。まずは業種別に計画的なOJTの実施状況です。

 

製造業や情報通信業では、約5割の企業が計画的なOJTを実施しています。しかし、卸売業や小売業では約4割未満に留まり、業種により差があることが確認できます。

続いてOFF‐JTについて確認します。

 

建設業や情報通信業で約半数の企業で計画的にOFF‐JTが行われています。特に建設業は職種によって資格が必要な場合があることが背景にあるかと思います。

一方、卸売業では実施の割合が4割以下と一番低い値となっています。

OJTは自社内で業務を行いながらの能力開発ですが、OFF‐JTは社内外で業務を離れての能力開発ですので費用が掛かります。企業はOFF‐JTにどれくらいの費用を掛けているのでしょうか。

 

従業員一人当たりの年間支出額として「非常に積極的」で2.8万円です。中央値ですので最高額がいくらか気になるところです。

さてOJT,OFF‐JTの結果、売上高にどのような効果があったのでしょうか。

 

 

OJTとOFF‐JTのどちらも実施している企業が9.5%と最も高い値となっています。一方、どちらも実施ていない企業は3.4%と低い値となっています。またOJTとOFF‐JTのどちらかだけを実施している企業で見ると、OJTだけを実施している企業の方が7.9%と高い値となっています。

OJTとOFF‐JTについて確認しましたので、自己啓発についても見てみましょう。

 

 

建設業や情報通信業では6割強もの企業が実施してます。これに対して卸売業や小売業では5割にも満たない実施割合となっています。

企業としては、どのような自己啓発の支援策を行っているのでしょうか。

 

 

全ての業種で「資格取得の費用補助」と「研修やセミナーの費用補助」が高い値を示しています。感染症の流行で着目されたeラーニングや通信教育は情報通信業以外ではあまり取り組まれていないようです。

次は自己啓発に対する従業員一人当たりの年間支出額です。

 

 

求める人材像や従業員の目指すべき姿を公表していれば、従業員も意欲が高まるのでしょうか。年間支出額は1.2万円となっています。

これまで見てきた能力開発が従業員の仕事への意欲に反映されれいるのか、企業に取っては大きな関心事のはずです。それを調査したデータを見てみましょう。

 

 

いずれの取組においても「実施している」企業の方が「実施していない」企業よりも従業員の仕事への意欲が高いことが分かります。

2022年版中小企業白書では「従業員の働きがいやモチベーション向上という観点からも、企業が積極的に能力開発の機会を提供することが重要といえる。」と結論付けています。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)