マネジメントの第一歩

ビジネスのヒントを綴っています

デジタル化の取組状況

デジタル化の取組状況

 

前回は事業方針におけるデジタル化の優先順位を確認しました。今回は、実際のデジタル化への取組状況を確認致します。

まずデジタル化への取組段階の類型です。第1段階は紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態です。次の第2段階は、アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態です。第3段階は、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態であり、第4段階は、デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態です。

 

では業種別に感染症流行の前後のデジタル化の取組状況を確認しましょう。

 

全ての業種で段階1及び段階2の企業は感染症流行後に減少しています。逆に段階3および段階4の企業が感染症流行後に増えていますので、感染症の流行によりデジタル化の段階が進んだことが分かります。

もともとデジタル化が進んでいた情報通信業では、感染症流行前では段階3が44.8%、段階4が9.5%と合わせて54.3%でしたが、感染症流行後では段階3が53.6%、段階4が18.6%と合わせて72.2%と増えています。

白書では卸売業を以下のように分析しています。

「卸売業は、情報通信業、学術研究専門・技術サービス業に次いで段階3の割合が現在は高く、5割以上となっている。サプライチェーンの中間流通を担い、販売・在庫などの情報が集まる卸売業において、データ分析やデジタル化による競争力強化に着手している様子がうかがえる。」

宿泊業・飲食サービス業は感染症流行後の段階4が15.6%と高い一方、段階1も11.5%と運輸・郵便業に次いで高い値です。企業間でのバラつきがあることが伺えます。

取組の段階別に労働生産生産性と売上高の変化も確認しましょう。

 

2015年ではデジタル化への段階が進んでもさほど労働生産性に差はありませんでした。ところが2021年との労働生産性の差を見たところ、段階1と2ではマイナス、段階3と4ではプラス、しかも段階4では⊿LP=824と大きく労働生産性を向上させています。また売上高においても13.8%と大きく増加させています。

下のグラフは2019年と2021年を比べてデジタル化への取組状況の進展別に労働生産性と売上高の変化を確認したものです。

 

 

労働生産性と売上高のいずれもデジタル化が進展した企業の方が、進展しなかった企業よりも減少幅が小さくなっています。しかし、デジタル化の進展が業務の効率化等を図り感染症の影響を少なく抑えたのか、感染症の影響が少なかったためデジタル化を進める余裕があったのかまでは判断できません。

では今後の事業方針においてデジタル化をどのように位置づけているのでしょうか。デジタル化の段階別に確認しましょう。

 

段階4では「事業方針上の優先順位は高い」が60.9%、「事業方針上の優先順位はやや高い」が29.7%と合わせると90.6%となります。また段階3でも両データを合わせると82.5%と高い値になります。段階1や2では、「事業方針上の優先順位は高い」と答えている割合が1割にも満たず、その違いは歴然としています。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)