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中小企業のIT投資の現状

中小企業のIT投資の現状

 

事業方針上のデジタル化の位置づけに続いて、中小企業が行っているIT投資の現状に関して見ていきましょう。

下のグラフは、2020年と2021年に行ったIT投資の額のデータです。

 

全産業では2020年、2021年共に7割以上の企業がIT投資を行っています。業種別に見ると2020年で売上高の2%以上の投資行っている企業が多い学術研究専門・サービス業と情報通信業は2021年であっても多くの企業が売上高の2%以上の投資を行っています。宿泊業・飲食サービス業は2020年より売上高の2%以上投資していている企業の割合が増えていますが、IT投資を行っていない企業も40.8%存在しています。

 

 

2020年と2021年の投資額を比べると、「ソフトウェアの開発・利用費」が35.8%から40.1%に増え、「基幹システムなどのハードウェア費」が28.7%から26.6%に減少しています。

2022年版中小企業白書では、近年のクラウドサービスの利用の普及が「ソフトウェアの開発・利用費」を増加させた要因ではないか、と分析しています。

IT投資額を業種別に直近5年間と今後5年間の投資計画を調べたのが下のグラフです。

 

直近5年間で「増加傾向にある」と回答した業種で最も割合が高かったのは建設業です。建設業は2020年と2021年のIT投資額は他の業種と比べて低い割合でしたが、今後5年間のIT投資額を「増加させる予定」と回答した企業が3割存在します。これについて白書では下記のように分析しています。

「同業者との差別化に向けてデジタル化に取り組む地域の有力建設業者や、重層的な取引構造の中で大手ゼネコンに追随し、サプライチェーンの合理化に向けデジタル化に取り組む中小建設業者が斯業界のデジタル化の機運を高めていくものと思料される。」

 

卸売業と小売業では、直近5年間で「増加傾向にある」と回答した企業が4割強となり、また今後も「増加させる予定」の企業が3割強あります。

IT化への取組が進んでいる情報通信業と学術研究専門・技術サービス業においては、直近5年間で「毎年安定的に投資している」割合が約4割、今後5年間に「おおむね同程度を予定」の割合が約7割です。この業種では今後も堅実なIT投資が行われるようです。

宿泊業・飲食サービス業と運輸・郵便業について見てみると、直近5年間で「デジタル化に向けた投資を実施していない」企業が約4割、また今後5年間も「IT投資は実施しない予定」の企業がそれぞれ約3割、2割存在しています。業種的にITを活用する業務が少ないのか、投資に見合うITツールが乏しいのか原因を知りたいところです。

ではIT投資によってどの程度業務の効率化が進んだのか、確認しましょう。

 

 

2020年、2021年のどちらでもIT投資額が多くなれば「業務効率化を実感している」企業の割合が高くなっています。しかし、売上高の2%以上のIT投資を行っている企業でも約4割が「業務効率化を実感していない」と答えています。

では競争力強化の面ではIT投資は効果を上げているのでしょうか。

 

やはりIT投資額が多い企業程、「十分に効果があった」、「ある程度効果があった」と回答している企業が多くなっています。またIT投資額が売上高の1%未満の企業であっても「十分に効果があった」と「ある程度効果があった」を合わせると2020年でも2021年でも6割を超えています。

IT投資が業務効率化や競争力強化に貢献していることが確認できました。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)