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デジタル化に取り組む際の課題

デジタル化に取り組み際の課題

 

2021年版中小企業白書では、デジタル化に取り組む組織としての課題を取り上げていました。2022年版では、具体的にデジタル化への検討や取り組む際の課題に関して調査しています。

まずはデジタル化への取組状況別に見た、デジタル化に取り組む際の課題です。

 

 

段階2~4においては、「費用対効果が分からない・測りにくい」の回答が最も多くなっています。機械設備の投資ならば費用対効果を測ることができますが、デジタル化への投資は定量的な効果が測りにくく、また長期的な観点でなければ効果を認識しにくいことが背景にあると思われます。

段階1の企業では、「デジタル化を推進できる人材がいない」と答える割合が最も高くなっています。段階2より上位にいくほど、「デジタル化を推進できる人材がいない」と答える割合が減少していきます。このことからデジタル化を進めるには、まず推進できる人材を社内で育成するか、新規に雇用することが必要になっています。

「従業員がITツール・システムを使いこなせない」に着目すると、どの段階でも3割強の企業が課題として挙げています。デジタル化への取組が進んでいる企業であっても、ITツールやITシステムは日々、進歩しておりますのでフォローしていくのが大変な様子が浮かびます。

「適切なITツール・システムが分からない」の回答は、段階2と3の企業で高目に出ています。段階4の企業では10%程度低くなっていますので、デジタル化の経験や実績を積むことで解消されていくようです。

「どの分野・業務がデジタル化に置き換わるかがわからない」の回答では、上位段階に行くほど減少しています。段階1の企業では、まず自社の業務の棚卸を行うことから初めて、デジタル化を検討する必要があります。一方、「情報流出が懸念される」の回答は上位段階に行くほど増加しています。デジタル化が進めばデジタルの情報も蓄積されていきますので、セキュリティ対策が重要となってきます。

次にデジタル化の取組状況別に見た、積極的なIT投資を行っている背景に関しても確認致しましょう。

 

 

2021年に積極的なIT投資を行った理由として、段階2から段階4までどの段階でも「業務効率化などによるコスト削減効果を実感」が最も高い割合となっています。その割合は、今後5年間のIT投資を増加する理由において更に高くなっています。

白書では、同じく投資効果を示す「売上向上などによる業績へのプラスの効果を実感」が段階4において2021年の投資では34.9%、今後5年間では44.5%と他の段階と比べても高いことからデジタル化が進んでいる企業はITツール・システムの導入効果の把握がその後のIT投資を促進させてることが推察される、と分析しています。

一方、積極的なIT投資を行っていない企業にはどのようは背景があるのでしょうか。

 

下位の段階の企業ほど「必要性を感じない」の割合が高くなっています。2021年の投資では段階1で64.2%、段階2で37.2%となっており、今後5年間では段階1が81.1%、段階2が66.0%となっています。白書では、「業務の棚卸しが十分でないために、ITツール・
システムによる効率化の可能性を検討できず、必要性を実感できていないことが考え
られる」、と分析しています。

また2021年の投資において段階2と段階3の企業は「投資効果がすぐには期待できないこと」を約2割の企業が回答しており、短期的な効果を求めるあまりIT投資が進んでいない可能性を指摘しています。

ここでデジタル化による効果も確認しておきましょう。

 

 

段階2から段階4までの企業の回答ですが、どの項目でも段階が上がるほどデジタル化の効果を得ていることが分かります。「財務基盤・資金調達力の維持・改善」の項目ではそんなに差は大きくないものの、その他の競争力の強化や顧客対応の強化に関する項目では段階2と段階4では大きな差になっています。デジタル化への取組が企業を成長させる可能性を持っていることが伺えます。

そのような直接的な効果ではなく、副次的な効果にも関するデータもあります。

 

 

副次的な効果にしても取組段階が上位になるほど高い割合となっています。特に高いのが「働き方改革に貢献した」であり、他にも「組織風土の改革につながった」、「社員のモチベーション向上、定着率向上につながった」という社内における効果がもたらされています。また「取引先との関係・連携強化につながった」や「顧客満足度が向上した」など社外での効果も確認することができます。

 

(図表は2022年版中小企業白書より引用)