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感染症流行を踏まえた事業再構築

感染症流行を踏まえた事業再構築

 

2020年からの感染症の流行は、中小企業・小規模企業の経営に大きな影響を与え、新たな事業展開を始める企業が増加しています。その現状を確認いたしましょう。

 

 

上記は、2020年から2022年までの3年間の感染症流行に対応するために事業の再構築を行った企業の割合の調査です。この3年間で「感染症流行を踏まえた事業再構築を行っている」企業は12.5%から20.3%まで6割も増えています。

 

ではどのような事業再構築を行っているのでしょうか。

 

最も多い取り組みは、「新たな製品等で新たな市場に進出する(新分野展開)」であり、2022年では60.3%となっています。次に多いのは「自社の主要な製品・商品・サービスの生産・製造方法を転換する(業態転換)」であり、2022年で16.4%の回答になっています。「組織の合併・分割、株式交換・移転、事業譲渡を通じた事業再編(事業再編)」も2020年から増加しており、2022年では13.6%となっています。

2020年に比べて2022年のn数が倍近くに増えていますので、感染症の流行に対応するため多くの中小企業が事業再構築に取り組んでいる姿が見えます。

 

このように事業再構築に取り組む中小企業を後押しするため、経済産業省では事業再構築補助金制度を創設しています。ところがこれまでの募集において「どのようなテーマに取り組めばよいのか分からない」「良い事業計画を作るのが難しい」という声も多いようです。

そこで約8万件の申請書をAI に読み込ませて分析し、有望な事業再構築に共通する特徴をまとめた「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」が公表されています。

ガイドブックでは、事業再構築に向けた事業計画の作成プロセスを示しています。

以下に、事業計画の作成プロセスとその説明を中小企業白書から青字として引用致します。

 

① 事業再構築の必要性確認
新型コロナウイルスや物価高騰等の影響を受けて、事業を行う環境は大きく変化し
た。そのような変化の中、自社のありたい姿を改めて見つめ直す必要がある。自社の
ありたい姿とは、「5~10 年後に実現したい事業・経営や顧客への価値」を描くこと
である。その実現のためには、会社をはじめたきっかけ、お客様に喜ばれたいという
思い、地元への愛着など、経営者自身の根本にある動機や経験を棚卸しし、改めて自
社のありたい姿を明確にする必要がある。自社のありたい姿が定まったら、自社のあ
りたい姿と現状のギャップを埋めるために、どのような“事業再構築”が最適である
か、考えることが、事業計画作成の第一歩である。

②有望な事業テーマの選定
事業再構築の取組を通し、大きく成長するためには、“いま流行りのテーマ”ではな
く、“自社にとって有望な事業テーマ”を見定めることが重要である。自社が置かれて
いる環境の分析、自社の強み・弱みの把握をした上で、自社に合った事業テーマを選
定していく。事業環境分析に当たっては、市場規模・トレンド、競合他社の動向、顧
客ニーズの変化といった観点について、HP の情報や口コミ、有識者や顧客へのヒアリ
ング、データ分析等を通し、今までの自社リソースをどう活かせるか、棚卸しする。
自社の強み・弱みの整理に当たっては、事業環境分析の結果をSWOT 分析の考え方
で整理することが有効である。
上記分析・整理をした上で、事業テーマ候補から、自社の「事業環境」「強み」の観
点から勝機のあるテーマを選定していく。公表しているガイドブックでは、統計上有
望な事業テーマについて分析した結果を掲載しており、テーマ候補検討の参考に活用
できる。


③事業計画の具体化
有望な事業計画に共通して含まれる項目が「市場/顧客」「SWOT」「財務状況/収益計
画」「遂行方法/スケジュール」など13 項目あり、これらの項目について検討した結
果を計画に落とし込むことで、具体的で説得力のある計画を作成することができる。
一方で、調査・分析、戦略、財務等多岐に亘る検討は自社内だけでは難しいこと
も多い。そこで、「認定経営革新等支援機関」として登録されている中小企業診断士
や金融機関など、経営の専門家に相談し、客観的な助言を得ながら考えを深めるこ
とが有効である。

 

「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」には、事業テーマの傾向を分析した結果、業種別の事例、アクションに繋げるためのツール類等、事業計画作成にかかる参考情報が多分に盛り込まれています。

事業再構築を検討するにあたり、参考となる資料です。

 

(図表は2023年版中小企業白書より引用)