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地域ドミナント

地域ドミナント

 特定地域に集中的に出店することで、その地域のニーズを独占して競合を排除し、配送などの効率を向上させるビジネスモデル。

 【ビジネスモデルの内容】

 このモデルは、実店舗を展開する小売業、サービス業に適しています。特定地域に高密度で出店することにより、主に下記の6点を狙いとしています。

①短期間で出店地域における知名度を上げることができる

知名度を上げることで、集客力の向上を図る

③集客力を向上させることで、立ち上げから早期に黒字化を実現できる

④競合の出店を阻止することができる

⑤店舗間の距離を短くすることで、輸送効率を上げることができる

⑥売上の分析から地域のニーズが把握でき、品揃え、新商品開発、広告宣伝などに反映することで効率的な店舗運営が可能となる

フランチャイズチェーンの場合、本部は加盟店の管理を効率的に実施できる

 

 【ビジネルモデルの根幹】

 「ドミナント」(dominant)とは、日本語では「優勢である」「支配的である」を意味します。つまり「他社と比べて優勢である」、「当該地域のニーズを支配できる」を体現したビジネスモデルです。

このビジネスモデルは、出店地域のニーズを独占し他社の参入を許さない「顧客の囲い込み」と、商品の配送運賃や各店の管理費用を分散する「固定費の分散」が根幹にあります。また密な店舗網を構築することで「参入障壁」を築くことが可能になります。

他者に先駆けて出店すれば、「早い者勝ち」の状態を作ることができます。

 

 【応用例】

 代表例は、コンビニエンスストアです。セブンイレブンドミナントの徹底ぶりは特に有名です。地域を絞って出店を進め、長らく青森、高知、鳥取、沖縄に出店していませんでした。それを2014年に青森、高知、鳥取に出店し、2019年7月に沖縄に14店舗を同時に開店しました。これで47都道府県を制覇したことになります。

その他、スーパー業界では、南関を中心にイトーヨーカ堂、東海地方ではユニー、関西ではイズミヤ等が特定地域を主力として出店しています。

また飲食サービスでは、多様な業態を開発し客層に合わせて出店することで、同一地域でのシェアを高めています。

【問題点】

強力な地域ドミナントですが、デメリットや注意すべき点もあります。

まず当然のことながら同じチェーン内における店舗間でのカニバリズム(共食い)が生じます。どの店舗に行っても同じ品ぞろえ、同じ価格で販売しているため、消費者は帰宅途中では途上の店舗、家庭内の不足品の補充では家に最も近い店舗と必要に応じて都合の良い店舗を利用します。しかし、店舗にしてみれば顧客の奪い合いに他なりません。直営店ならばともかく、加盟店同士でカニバリズムが発生すれば、加盟店側に不満が生まれるリスクがあります。

 

また地域の人口構成や社会的環境が変われば、売上が大きな影響を受ける可能性があります。大きな工場の移転、高速道路やバイパスの開通による交通量の変化などにより、当該地域の複数の店舗の売上が同時期に下がってしまうことになります。また地震や台風などの災害時にも、複数の店舗が一度に被災してしまうリスクもあります。

 

更に地域の住民に飽きられてしまうと、他社の参入を許してしまうことになってしまいます。たまには違うものを食べたい、と思っても、他の選択肢がないことが住民の不満につながり、他社が参入してきた場合に目新しさからスイッチングされてしまうことが生じます。