選択的注意
多くの情報に取り囲まれる環境で、自分にとって重要だと認識される情報のみを選択し、それに注意を向ける認知機能。
【解説】
選択的注意の代表例はカクテルパーティ効果です。パーティのような大人数があちこちで会話をしていても、相手の会話は聞き取れますし、隣で自分の名前や関心事が話題に上がれば聞き取ることができます。沢山の情報があっても、自分の関心の高い情報には、すぐさま注意を向けることができるのです。
選択的注意は、聴覚だけでなく視覚でも起きます。街の雑踏の中でも、たまたま知り合いに出くわせばすぐに認識することができます。知っている顔だからこそ、大勢の人の中でも見分けることができるのです。
【信憑性】
選択的注意に関しては、複数の心理学者により実証実験が行われています。その代表例はチェリーという心理学者が行った両耳分離聴の実験です。被験者にヘッドホンを通して両耳に別々の文章を聞かせたところ、事前に注意を向けるように指示した方の耳に聞こえた文章は復唱できました。しかし、もう一方の耳に聞こえた文章を思い出させたところ、ほとんど報告できませんでした。このことから注意を向けていなかった情報は早期に忘れられる、と考えられ、これを早期選択説と呼びます。
その後、他の研究者の実験では無視すべき側の耳に届いた文章に被験者自身の名前が含まれていた場合には、3割程度の被験者が気付いていたことが明らかになりました。これは入力された情報の取捨選択は、その意味を理解した後で行わると考え、後期選択説が唱えられました。
【適用例】
早期選択説と後期選択説は、学問上では研究者により論争されています。
どの学説が正しいかはともかく、ビジネスにおいての適用を考えてみます。
特定の相手に向けた広告では、そのコンテンツに相手に関する情報を含めておけば他の広告よりも注意を向けられ、記憶に残りやすくなります。ありきたりの内容では誰にも覚えてもらうことはできませんが、相手を特定した情報を発信すれば該当する人に記憶してもらえます。全く記憶されないよりも、人数が少なくても確実に覚えてもらうことが期待できるのです。テレビCMでも日本人に多い佐藤、鈴木、田中などの名字を使った内容にすれば、「あっ、私の名前だ」と注意を喚起し、かなりの数の人にメッセージを届けられます。
一方、情報を受け取る立場であれば、そのようにして自分の関心を引こうとしている相手の狙いは何か、を考える必要があります。妙に馴れ馴れしいのは、裏に何かありそうですね。